研究概要 |
動的非対称の大きな高分子によるブロック共重合体において、無秩序状態(相溶状態)におけるガラス転移挙動の協同運動性やその運動セグメントサイズに関して研究した。おもに電子スピン共鳴法(ESR)による高分子のガラス転移のセグメントサイズに関する知見を得た。動的非対称である二成分系無秩序状態として、ポリシクロヘキシルアクリレートとポリシクロヘキシルメタクリレートのブレンドのガラス転移挙動の不均一性を観測した。互いの高分子の独立観測により、異なるガラス転移挙動が見いだされた。相溶性ブレンドのガラス転移温度は高分子の屈曲性の指標であるkuhn長を基準にした局所体積中の互いの組成に支配される。つまり局所的には自身の濃度が高くなる(自己濃縮)ことで説明できる。ESRスピンラベル法で観測した分子運動サイズは約kuhn長の三乗程度であることが見積もれた(Macromolecules 37,6061,2004)。その効果は、高分子の末端と内部セグメントでは異なり自己濃縮効果は末端近傍で減少することを明らかにした(Macromolecules 37,8612,2004)。また選択的ESRスピンラベル法を用い単一成分の高分子ポリメチルメタクリレートの鎖末端と内部セグメントのガラス転移温度の分子量依存性を詳しく調べ、運動セグメントサイズがkuhn長の三乗程度であることを明らかにした(Macromolecules 38,832,2005)。 高分子ブレンドおよびブロック共重合体の相溶状態の動的不均一性を温度変調示差走査熱量計を用いて詳しく評価した。動的非対称性が大きな組み合わせではガラス転移挙動が二成分的に観察される。ブロック共重合体(ポリスチレン-b-ポリn-ブチルアクリレート)においても同様であり、すべて自己濃縮効果によりその無秩序状態における動的不均一性を説明できることを明らかにした(Macromolecules 38,2355,2005)。
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