研究概要 |
巨視的な液晶配向を有するモノドメイン液晶ゲルの体積相転移を実験および理論的に明らかにした.ポリイミド配向膜を塗布したセル中で一軸配向した液晶モノマーを光架橋することにより,モノドメインネマチック相を示すゲルを作製した.液晶ゲルの等方性溶媒あるいは液晶溶媒中の平衡膨潤挙動を温度を変数として調べた.ゲルは狭い温度範囲内で等方相とモノドメインネマチック相の間を可逆的に転移した.等方相は膨潤相であり,ネマチック相は収縮相となった.また,ネマチック相ではゲルは液晶配向方向に伸びた形状となり,温度の低下とともに形状異方性は大きくなった.液晶溶媒中でも同様の体積相転移が起こったが,興味深いことにモノドメイン液晶ゲルの体積(膨潤度)は巨視的配向をもたないポリドメイン液晶ゲルの場合と同様の回帰的な温度依存性を示した.このことは,巨視的な液晶配向はゲルの異方的な形状変化を引き起こすが,体積(膨潤度)には大きな影響を与えないことを意味している.平均場理論によって液晶ゲルの異方的な膨潤挙動を考察した.理論は膨潤度および形状変化の実験結果の特徴をよく記述した.ただし,理論は過度の形状異方性および不連続相転移を予測した.前者は配向度の過剰評価のためであるが,後者については実験において連続相転移が観察される原因ははっきりしていない。 また,誘電異方性の正負が異なる液晶ゲルの電場変形挙動を調べた.誘電異方性の正負に応じて,ゲルは電場方向に伸長あるいは圧縮されることがわかった.さらに,電極などによる束縛のないモノドメイン液晶ゲルは,電場をかけると大きな複屈折変化(電気光学効果)とともに異方的な変形を示すことが明らかになった.液晶配向の変化する面内で変形は起こるが,それに関与しない面ではほとんど変形が起こらないことがわかった.
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