本研究では、多糖類をオリゴ乳酸鎖で化学修飾した新規多糖誘導体を合成し、これとポリ乳酸との相溶化をはかって、新規な生分解性ポリマーブレンドを創製することを目的としている。今年度中に得られた主な知見は以下の通りである。 幹ポリマーとしてヒドロキシエチルセルロース(HEC)またはセルロースアセテート(CA)を用い、塩化リチウムを触媒としてL-ラクチドの開環グラフト化反応を行い、オリゴ乳酸鎖がグラフト化された多糖誘導体(グラフト化多糖)を得た。得られたグラフト化多糖については、FT-IRおよび^1H NMRによりキャラクタリゼーションを行った。 次いで、共通溶媒を用いた均一ポリマー混合溶液からのキャスト法により、グラフト化多糖とポリ乳酸(PLA)からなるブレンド試料を作製した。得られたブレンドについて、DSC熱分析によるガラス転移点の評価に基づき、相溶性を判定した。その結果、これまでに得られているグラフト化多糖は、熱分析で見積もられるレベルにおいて、PLAとは非相溶であった。なお、比較検討のため、幹ポリマー成分であるHECまたはCAを用い、HEC/PLAおよびCA/PLAブレンドも作製したが、これらは非相溶ないし部分相溶系であることを確認した。現在までに得られているグラフト化多糖は、いずれも枝鎖となるオリゴ乳酸の連鎖長が短いため、多糖としての性質が強調されすぎ、PLAとの良好な相溶性の発現に至らなかったと考えられる。 現在、さらに長い枝鎖連鎖長を有するグラフト化多糖の合成に取り組んでおり、それが得られたら上記と同様にブレンド試料を作製して相溶性を評価する予定である。これにより、グラフト化多糖の枝鎖の連鎖長と相溶性との関係を明らかにできると期待される。 上記に加え、本研究から得られた結果を合理的に解釈するための準備として、いくつかのセルロースエステルと合成ポリマーとのブレンドを作製し、その相溶性や分子間相互作用について評価検討した。
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