研究概要 |
本研究では超高速時間分解X線吸収微細構造(XAFS)測定のためのシステムを構築し、実際の系に適用し光励起に伴う超高速分子構造変化を直接観測することを目的とする.本年度はその準備として,塩化セシウム水溶液を用いたフェムト秒レーザー誘起X線の発光強度の増加と,定常XAFS測定を行った. X線発光強度の増加のためには,p偏光のメインレーザーパルスに先立ちs偏光のプレパルスを照射するというダブルパルス照射実験を行った.ここで二つのパルスの時間間隔を変化させたところ,0-15nsの間に4つのX線発光強度のピークが観測された.X線発光スペクトル測定を行ったところ,もっともX線発光強度が高いときには,シングルパルス照射の時の最適条件と比べて,銅のX線吸収端付近においておよそ800倍程度X線発光強度が増加していることが明らかとなった. つづいて得られたX線パルスをプローブ光とするX線回折計を試作した.光学系には点光源に最適なvon Hamos型を採用し,分光結晶にはX線回折強度や分解能が十分な湾曲LiF(200)を用いた.検出器には半導体検出器もしくはX線CCDカメラシステムを用い,試料には銅箔および硫酸銅水溶液を用いた.銅箔のX線吸収端構造を測定したところ,従来の放射光施設で測定した結果と一致した.さらに銅の価数が異なる硫酸銅水溶液を測定したところ,価数の増加に伴う吸収端の高エネルギーシフトが明瞭に観測された.このことは今回試作したXAFS測定計が十分能力を有することを示していると言える.
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