研究概要 |
分子への電荷注入による励起子生成機構を解明し,高効率励起子生成のための分子設計指針を確立することにより、有機ELデバイス(有機発光ダイオードとも呼ばれる)の発光材料設計を既存材料のモディファイやトライアンドエラー等の経験的な手法から脱却させることを目的に、有機ELデバイスの時分割過渡EL波形測定により、電荷注入、電荷輸送、励起子生成などの諸過程の解析を行った。 1.有機ELデバイスにおける動的電荷注入機構 仕事関数の異なる電子注入電極を用いた有機ELデバイスの過渡EL波形への影響を検討した。EL強度は、パルス電圧の印加より遅れるが、その遅れが、電極仕事関数の増大と正の相関があることを見出した。これは、電子注入電極と電子輸送材料との間の電子注入障壁の増大により説明できる。しかし、得られる動的注入しきい電界強度は、直流バイアス測定から得られる静的電子注入しきい電界強度より大きく、連続注入時の電荷注入アシスト機構の存在を示唆している。 2.3重項発光体増感蛍光発光型有機ELデバイスの励起子生成過程 電子-光子変換効率の高い有機イリジウム錯体などのりん光発光材料が注目されているが、中心金属や配位子の制約のため、有機発光ダイオードの特徴である分子設計による自由度の高い発光波長選択性の点では不十分である。そこで、りん光発光材料と蛍光性色素の2重ドープデバイスが提案されているが、その励起子生成機構は不明である。そこで2重ドープELデバイスの過渡EL波形解析を行った。その結果、りん光材料から蛍光色素へのエネルギー移動とともに、蛍光色素での直接再結合による励起子生成が示唆された。
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