研究概要 |
平成16年度は,超伝導薄膜における表面抵抗の磁場依存性を測定することにより,超伝導薄膜型ピックアップコイルとしての使用環境限界と最適材料の検討を行った.本年度は,MBE法により作製された高品質YBa_2Cu_3O_<7-δ>(YBCO)及びDyBa_2Cu_3O_<7-δ>(DyBCO)薄膜(THEVA社),APE(Amorphous Phase Epitaxy)法により作製されたTlCa_2Ba_2Cu_3O_<10-y>(Tl-1223)薄膜(産業技術総合研究所),MBE法により作製されたas-grown MgB_2薄膜(いわて産業振興センター)の磁場中表面抵抗測定を行った.測定には誘導体共振器法(21.8GHz)を用いた.その結果,極低温(T=4.2K),強磁場中(B=5T)におけるDyBCO薄膜のR_s(@1GHz)は,YBCO薄膜やTl-1223薄膜に比べて一桁程度低く,さらに常伝導体(Cu)と比較して約1/50という低R_s特性を示し,その有用性を実験的に明らかにすることができた.この原因は,DyBCO薄膜内での強いピンニングによるものであると考えられる.また,DyBCO薄膜の臨界電流密度とR_sの相関が磁場中でもほぼ成り立つことを明らかにした. 次にマイクロストリップライン共振器法を用いてYBCO薄膜におけるR_sの印加磁場角度依存性を調査したところ,薄膜のc軸方向に対して45°の角度で磁場を印加した場合,R_sの印加磁場による増加量が最も大きく,90°の場合が最も小さかった.この結果はこれまで報告されている臨界電流密度の印加磁場角度依存性と矛盾せず,その物理は磁束のパンケーキモデルで説明可能である.また,応用的には様々な角度からの磁場印加を伴うMRIピックアップコイルとして,充分に応用可能であることを示した.
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