研究概要 |
KrFエキシマレーザ(248nm),Nd:YAGレーザの基本波(1064nm)および第2高調波(532nm)の波長の異なる3種類のレーザを用い,大気圧下パルスレーザ堆積(PLD)プロセスによるAlq_3,TPD,PVCz有機EL薄膜の作製を目的とした。まず,レーザパラメータ(レーザ波長,レーザフルエンス)が堆積膜に及ぼす影響や,アブレーション時の発光粒子挙動を調べ,最適作製条件を求めた。その結果Alq_3,TPD薄膜において,レーザパラメータが堆積膜の構造・光学特性や堆積プロセスに影響することを,X線回折装置,光透過スペクトル,フォトルミネッセンス測定により明らかにした。またポリマーPVCz薄膜の形成では,プロセス条件と堆積膜との相関関係を赤外吸収分光計により定量的に検証した。これよりPLDプロセスは,次世代自発光有機材料作製プロセスとしての可能性を示した。次に,様々な雰囲気ガス種およびガス圧力下で有機薄膜の作製を行い,真空中に比べて窒素(N_2)ガスを用いた場合に堆積膜の特性が改善された。これはアブレーション過程でターゲット材から分解されたN原子が,N_2ガスを用いることによって効率良く膜中に取り込まれたためであり,フーリエ変換型赤外分光光度計で構造特性の改善が確認された。またN_2ガス圧力の増加(〜200mTorr)に伴い,フォトルミネッセンススペクトル強度が大きく現れたことから,適当な圧力でN_2ガスを封入することにより,発光特性の改善を行うことができた。さらに大気圧に近い圧力下で薄膜の作製を試みたが,アブレーション粒子が基板に到達するためにはターゲット-基板間距離を近づけることが重要となり設計等が難しいことから,予め最適作製条件下で透明基板上に堆積した有機薄膜に背面からレーザを照射することにより,接近させた別の基板上にドット転写する新しい手法が考えられる。
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