本研究は、軟X線反射多層膜鏡のナノメートル周期膜厚を精密に所定の膜厚に制御するために、成膜過程を高感度でその場計測できる成膜モニターを開発することが目的である。前年度にハードウエア開発は完了したので、本年度は、数十層から数百層から成る多層膜の各層の膜厚と光学定数を精密に決定する解析ソフトウエアの開発を行い、13.5nm用Mo/Si多層膜と「水の窓」用Sc/Cr多層膜成膜に適用し、最適性膜条件探索を行った。 Layer-by-layer法を適用した解析法では、これまで使用していた解析アルゴリズムを抜本的に見直し、解析時間を従来の半分以下(50ミリ秒)と大幅に短縮することが可能となった。解析アルゴリズムは二分法、 Newton法、 Levenberg-Marquardt法、 Powell法など数種類から選択できるものとし、様々な成膜物質の解析に適用可能とした。また、成膜速度の線形フィッティング、成膜物質の充填密度解析に対応したものとした。これらを用いた解析結果は、成膜過程解析と最適成績条件探索の基礎データとなる。 イオンビームスパッタリング成膜装置で、イオンビームの加速電圧のみを変え、成膜モニターでその場計測しながらMo/Si多層膜を成膜した。計測および解析結果から、これらの成膜過程の差異はターゲット物質切り替え直後に顕著に現れることが分かった。またSc/Cr多層膜では、成膜装置の到達真空度がSc膜の膜質に影響を及ぼすことが分かった。開発した成膜モニターは膜成長過程を精密に計測出来る事から、ナノメートル周期膜厚の軟X線多層膜成膜に有効であることが実証された。 新たに得られた成果は、顕微鏡国際会議(XRM2005)と多層膜の物理国際会議(PXRMS2006)で報告した。
|