研究概要 |
近年,化粧品開発や皮膚医学の分野において,美白効果の確認や皮膚病診断,美白・治療後の肌の見え予測などの技術が求められている.特に,肌内部に存在するメラニン・ヘモグロビン色素の増減により肌色が変化することから,各色素成分を定量的に測定することで実現に近づくと期待される.各色素成分の測定時において,皮膚細胞や血液の摂取など行為は被験者の負担となるため,非侵襲性の測定方法が望まれている.そのため,各色素成分の濃度を肌画像から推定する手法が研究されてきた.しかし,これまでの解析手法では肌色に関する経験的な濃度空間線形モデルを用いているため,抽出された成分量は定量的な値ではなく,抽出された成分の相対的な空間分布を得るのが限界であった.そこで,申請者は本研究において,まず独立成分分析により抽出された色素成分・陰影成分と各色素の吸収係数・散乱係数等の物理量との関係を平成16年度に明らかにした.平成17年度は,平成16年度に提案した拡散反射モデルに対してまず一層ファントムを用いて評価し,また,これまでの独立成分分析で抽出された成分の対応をとる手法を開発し,抽出された成分の定量性を確保した.しかし,実際に様々な人種の肌に適用した肌拡散反射の経験的近似モデルに基づく肌色素濃度推定法の評価は十分になされていなかった. そこで本年度では,提案してきた定量的肌拡散反射の経験的近似モデルを用いた肌色素濃度推定法の評価を行った.まず肌拡散反射の経験的近似モデルを用いて分光測定器により測定した分光反射率から肌色素濃度を推定した.次に肌拡散反射の経験的近似モデルを用いて様々な人種の顔画像から各色素成分に分離し肌色素濃度を推定した.最後に非線形濃度空間における独立成分分析を用いた肌色素濃度推定法によって様々な人種の顔画像から各色素成分に分離し肌色素濃度を推定した.その結果,肌拡散反射の経験的近似モデルでは従来法である線形モデルに比べて2.5〜5倍のフィッティング精度を持つことがわかった.
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