研究概要 |
平成16年度はRFプラズマ励起活性窒素源を装備したMBE (RF-MBE)装置を用い、極性制御技術を確立した。反射高速電子線回折およびKOHエッチングにより巨視的格子極性を判定する事でその制御法を検討した。(a)サファイアc面上に直接GaNを成長した場合、N極性が支配的なエピタキシャル膜が得られたのに対し、(b)700℃における高温窒化及び(c)AlN緩衝層挿入によりGa極性膜が得られる事を確認した。高品質なN極性膜の作製は依然困難との報告が多いが、本研究では(d)200℃において低温窒化したサファイア上に製膜した結果、直接成長のN極性膜より粒径が顕著に増大、かつ成長中にNフラックス変調を行うことでX線回折ロッキングカーブ半値幅が15秒と激減、高品質化した。 平成17年度には格子極性反転構造の試作とその微視的評価技術を開発した。上記(b,c)の条件を用いてGa極性GaNテンプレートを作製した後、収束イオンビーム(FIB)加工機を用いて部分的にサファイアを露出させ、これをHCl溶液にて処理した後に条件(d)にてGaNを再成長した。まず顕微ラマン散乱により、再成長した全領域にてエピタキシャル成長が行われている事を確認し、かつフォノンモードのピークシフトからピエゾ分極電荷を見積もったところ、正味の分極電界には自発分極の寄与が支配的である事がわかった。またLOプラズモン結合モードが観測されない事からキャリア濃度差による面内の表面電位差が小さいことを踏まえ、続いてケルヴィンフォース顕微鏡観察を行ったところ、FIB加工領域の再成長GaNはその周囲のGa極性領域に比べ1.2V高電位となり、自発分極電荷の符号が反転、つまり格子極性反転したN極性の実現を確認した。以上よりGaN格子極性反転ヘテロ構造を実現、KOHエッチングによる深溝作製の可能性も併せ、非線形光学素子材料としての有意性を示した。
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