昨年度、微小電気機械システム(MEMS)構造を集積化した2次元フォトニック結晶スラブ線欠陥導波路を作製し、その透過率を変調することに成功した。この成果は論文として発表した。しかしながら複雑な作製プロセスのため歩留まりが非常に悪いことが問題であった。今年度、作製プロセス、特にフォトニック結晶上のMEMS構造リリースプロセスの改善を行い、歩留まり向上の見通しを得ることができた。またMEMS制御フォトニック結晶微小共振器の実現を目指した設計を進め、これまで採用してきた可動平板に変えて、可動フォトニック結晶スラブを用いることで高性能化が図れることを示した。可動フォトニック結晶スラブを採用することにより、Q値の劣化を2割程度に抑えつつ共鳴波長を大きく(波長1550nm近傍で約60nm)変化させることができる。現在、本構成の素子作製を進めている。さらに、複数のフォトニック結晶スラブを用いた再構築可能な3次元光回路の概念を提案し、基礎的構成として3枚の2次元フォトニック結晶スラブにMEMS機構を導入し、3次元的な光路切り替えが実現できることを数値計算により示した。本方式は複雑な3次元フォトニック結晶の設計を用いる必要がなく、これまでのMEMS集積化フォトニック結晶素子の作製技術の延長で実現可能であることから、3次元微小光回路として有望な構成と期待できる。今後、本構造の設計および作製も進める予定である。
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