研究概要 |
生体の3次元瞬時光計測を行いバイオテクノロジに新たな理解や発見を行うことを目指して,デジタルホログラフィにおいて光の並列性を利用して位相シフトを並列に行い3次元計測を行う方法を検討し,この方法を行うシステムの設計と原理確認実験システムを構成した.また,実験システムにより所望の結果が得られ提案方法の有効性を確認した.位相シフトデジタルホログラフィに必要な4段階に参照光の位相シフトを行う方法として,偏光面を制御することで実現する方法を考案し,実現システムの設計を行った.提案方法では,従来の位相シフトディジタルホログラフィの記録システムに対して,位相シフトアレイデバイスと撮像素子を近接させることで実現する.この実現方法により,並列位相シフトディジタルホログラフィシステムを簡便に構成できる.さらに本方法では,従来方法で必要であった高精度位置合わせが不要になる.本システムの動作は以下の通りである.レーザからの光は,偏光ビームスプリッタによって2つの偏光に分けられる.ビームスプリッタで重ね合わさった2つの光は位相シフトアレイデバイスを通ることで干渉し,4段階(0,-π,-π/2,-3π/2)の位相の異なる参照光で記録したホログラムが得られる.位相シフトアレイデバイスはλ/4板,λ/4板の高速軸と同じ屈折率をもったガラス,直交した偏光軸を持った偏光板からなり,CCDと一体化されている.各素子はCCDの画素と同じように配置され,各素子の1区間の大きさもCCDの1画素の大きさに等しい.偏光板の偏光軸の方向は,入射する2つの光の偏光方向に対し,それぞれ45度となるように配置され,λ/4板の高速軸と低速軸がそれぞれ物体光と参照光の偏光方向と一致するように配置される.偏光板はガラスを通った物体光と参照光の偏光方向を一致させるために用いる.この結果ある区画に到着した参照光と物体光の位相差は0radとなる.同様に他の区画に対しても,参照光と物体光の位相差はそれぞれ-π,-π/2,-3π/2となる.このようにして位相シフトアレイデバイスを用いて参照光の位相を空間的に物体光の位相を基準として4段階にシフトさせて干渉縞を記録する.並列準位相シフトディジタルホログラフィの像再生では,計算機内で,記録したホログラムに対して,同じ位相を持った参照光で記録された画素をそれぞれ抜き出して4枚のホログラムI(0),I(-π/2),I(-π),I(-3π/2)を得る.この4枚のホログラムを用いて次式で与えられる位相シフト法の計算を行い物体の複素振幅を求める.本システムの動作原理の有効性を示すために,位相板と偏光板を用いて確認実験を行った.水中に存在する微生物として長さ約300μmのワムシを被写体として,512×512からなる画像の3次元顕微イメージングができることを確認できた.
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