本研究では、高出力レーザーパルス発生を可能にするための、紫外レーザー結晶を用いた新方式のサイドポンプレーザー増幅システムの設計と構築を目的としている。今年度は、昨年度までに作製したレーザー増幅器の評価を行った。サイドポンプ増幅器用Ce : LiCAF結晶は入力及び出力パルス用に2つのブリュースター面、励起パルス用には2つのブリュースター入射面と内部反射用の2つの直行した面を持つ。励起レーザーとして4台のNd : YAGレーザーを用い、2つのブリュースター面をそれぞれ2本のビームで励起する。シードパルスには、Ce:LiCAF結晶を利得媒質としたNd:YAGレーザー励起の共振器から発生させた、波長290nm、パルス幅3ns、パルスエネルギー6mJ、繰返し周波数10Hzのパルスを用い、今回作成したレーザー増幅器によって増幅する。その出力がこれまでに得られている最大のパルスエネルギー(32mJ)に達した場合の励起状態における利得分布を、紫外用CCDカメラ及びカメラレンズを用いて評価を行った。増幅されたビームのパターンは比較的良好なものが得られているが、結晶の角でけられたビームが結晶内で一部乱反射を起こしている。これを取り除くようにビームを照射すると増幅率が大幅に減少するため、この点について今後改善の必要性がある。しかし、結晶内における寄生発振は観測されておらず、これによる結晶の損傷が起こる可能性はきわめて低い。またシードパルスと励起レーザーのパルスの遅延の許容幅についても評価を行い、半値全幅で11ナノ秒であった。これは、電気的にタイミング制御を行うのに十分な許容幅であり、制御系に関する改善点は必要ないといえる。これらの評価から、本研究において開発したレーザー増幅器は、紫外テラワットレーザーに利用できる実用的なものであるといえる。
|