物質内部のナノメートルスケールの局所的な物理性質を非破壊的に測定する方法として、レーザーピコ秒超音波法がある。この方法は、ポンプ光で試料に励起した超音波パルスの波形変化を、プローブ光で検出する技術である。検出には、ひずみによって試料表面近傍の光学的性質が変化することを利用しており、試料内部の物理的な変化を実時間で測定することが可能である。透明な試料に対して、プローブ光の反射率から各時刻におけるピコ秒超音波によるひずみの空間分布を求めることが本研究の目的である。プローブ光の反射率の角度依存性・波長依存性からひずみの空間分布を求める測定を行う。測定にはフェムト秒レーザーによるポンプ・プローブ法を用いる。 本年度は、昨年度の反射率の角度依存性からひずみの空間分布を求める実験および解析手法を構築を元に、BK7ガラス上に金薄膜を蒸着した試料を用いて、金薄膜で励起されたピコ秒超音波がBK7ガラス中を伝播してゆく様子を可視化した。実験は、2色の光パルスを用いたポンプ・プローブ法で行った。ポンプ光により試料中にピコ秒超音波パルスを励起・伝播させ、試料を回転させながらプローブ光の反射率を測定した。本年度の研究により、超音波パルスの周波数分布と角度走査による反射率変化の信号強度に相関があることが新たにわかった。そのため、より最適な実験条件として、励起される超音波の周波数をプローブ光レーザーの波長や実験可能な角度スキャンの範囲に合わせるため、超音波励起用の金属薄膜の材質として金を、プローブ光の波長として830nmを選択し、角度スキャンの範囲を10-80度とした。これにより、昨年度の実験条件をさらに改善し、よりこの測定方法の実験精度を高めることができた。
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