研究課題
これまでの研究で、実世界のカオスに影響を与える「ダイナミカルノイズ」に関して解析を行い、ダイナミカルノイズのカオスへの影響を抽出する評価手法を得た。本評価手法は、観測された時系列データに対して特異値分解を行い、得られた特異値の時間的なゆらぎを抽出することにより、ダイナミカルノイズのカオスへの影響を調べる手法である。既に本評価手法を用いて、低次元カオスについてはダイナミカルノイズによるカオスの複雑挙動、特に「ノイズ誘起秩序」に焦点を当てシステムの安定化の様子を時間スケール依存性の観点から解析を行った。そこで本年度は、引き続き低次元カオスでの解析を継続すると共に、高次元カオスについても「ノイズ誘起秩序」に関する解析を行った。低次元カオスの解析では、従来のChuaの電子回路モデルに加え典型的な低次元カオス力学系であるLorenzモデルに対して同様の解析を行い、これまでに得られた電子回路モデルでの結果と類似した「ノイズ誘起秩序」が生じることを確認した。また、そのメカニズムについて解析を行った。高次元カオスの解析では、Globally Coupled Map (GCM)モデルを用い、個々の要素に対して種々のノイズ強度のガウシアンホワイトノイズを加法的に加えて、カオスが発生する状態遷移パラメータ値でのGCM平均場の振動状態の変化の様子を調べた。その結果、低次元カオスの場合と同様にノイズ強度に依っては特異値のゆらぎが低減しシステムが周期的な安定状態に変化する「ノイズ誘起秩序」が現れることがわかった。また、種々の状態遷移パラメータ値に対しても同様の解析を行い、ノイズが無い場合に周期状態が発生するパラメータ値の場合よりもカオスが発生するパラメータ値の場合の方が、ダイナミカルノイズに対する安定性が高く「ノイズ誘起秩序」も出現し易いことが、本評価手法を用いることにより明らかになった。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (3件)
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