研究概要 |
本研究では,アメリカン・オプション,経路依存型オプション,複数資産に依存するオプションなど,価格を求める解析的公式が存在しない複雑な派生証券について,高速・高精度に価格を計算するための数値計算手法の開発を目的とする。これに対して,平成16年度は次のような研究成果が得られた。 (1)2資産に依存するオプションに対する計算法の開発 スプレッド・オプション,クウォント・オプションなど,2種類の資産に依存するオプションの価格を高速ガウス変換と2重指数型数値積分公式の組み合わせにより計算する方法を開発した。価格を5桁程度の精度で求める場合,本手法は,従来の2項モデルやモンテカルロ法に比べ,10〜100倍程度高速である。本成果は論文にまとめ,現在投稿中である。 (2)ジャンプのある資産価格モデルの下での計算法の開発 資産価格のジャンプを考慮したマートンのモデルの下で,バリア・オプションやルックバック・オプションの価格を高速・高精度に計算する方法を開発した。本手法は,従来法のうち最高速の手法であるReinerのアルゴリズムと比較しても高速である。バリア・オプションに対する手法についてはOperations Research誌に掲載予定,ルックバック・オプションに対する手法については現在投稿中である。 (3)ポートフォリオ最適運用のための基礎研究 オプションを含む資産ポートフォリオの最適運用を行うには,資産間の相関を主成分分析などにより解析することが必要である。これは数値計算としては大規模な固有値問題となる。これを解くための種々の計算アルゴリズムを実装し,速度・精度の比較評価を行った。本成果は論文にまとめ,情報処理学会論文誌ACSに掲載された。
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