ニッケル基合金は、火力・原子力発電所等における高温環境下にて多用される重要な材料であるため、その応力腐食割れ対策は非常に重要な課題であり、その一因である鋭敏化を定量的に評価する手法の確立が求められている。本研究では、磁気特性は材料のマイクロストラクチャーに対して敏感であることに着目し、電磁気的な手法に基づくニッケル基合金の鋭敏化の定量的な評価手法を確立することを目標とする。最終的には、材料劣化の微視的な組織及び磁化の観察と巨視的な磁気測定を組合せた議論を行い、新しい方法論を確立する。 平成16年度は、下記の2項目について研究を実施した。 (1)鋭敏化処理条件を変えた複数のニッケル基合金試験片に対して、磁気力顕微鏡観察による磁化分布観察、SEM観察による結晶粒の観察、EDXによる結晶粒界近傍のクロム濃度分析を行い、結晶粒界、磁区の特性量を抽出した。次年度に、これらの結果に基づいて微視的な特性量を考慮した修正Jiles-Atherton(J-A)モデルに基づいて磁気ヒステリシス曲線について議論する予定である。 (2)鋭敏化処理条件を変えた複数のニッケル基合金試験片に対して、インピーダンスアナライザを用いて渦電流法により評価を行い、渦電流信号と鋭敏化との相関があることを確認した。また、巨視的な磁気特性と導電率を測定し、渦電流信号との整合性を議論した。次年度に、この結果と本研究で構築する磁気モデルとの整合性を検討する。
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