ニッケル基合金は、火力・原子力発電所等における高温環境下にて多用される重要な材料であるため、その応力腐食割れ対策は非常に重要な課題であり、その一因である鋭敏化を定量的に非破壊で評価する手法の確立が求められている。本研究は、磁気特性は材料のマイクロストラクチャーに対して敏感であることに着目し、電磁気的な手法に基づくニッケル基合金の鋭敏化の定量的な評価手法を確立する。このために、以下のとおり、材料劣化の微視的な組織及び磁化の観察と巨視的な磁気測定を組み合わせ議論を行った。 (1)鋭敏化度の異なるニッケル基合金(インコネル600)熱処理材を作製し、磁気力顕微鏡を用いた微視的な磁気特性評価を行った。その結果、結晶粒界における磁化と推定とクロム濃度欠乏層とが相関することを見出した。また、鋭敏化によりニッケル基合金の磁化曲線の形状が変化するが、この形状について微視的観察結果に基づいてモデル化を行った。 (2)鋭敏化に伴う結晶粒界におけるミクロな磁気的変化と、交流磁化法、渦電流法における信号との間の関係を議論した。さらに、(1)で得られた磁気モデルに基づく電磁場有限要素解析と実験結果を比較することにより、渦電流法及び交流磁化法における信号と磁気特性との関係を定量的に議論し、鋭敏化度を信号値から推定する手法を提案した。 本研究における上記の(1)と(2)の実績から、電磁非破壊評価手法によりニッケル基合金の鋭敏化度を評価する新しい手法が確立されたといえる。
|