先進デバイスの高機能化・微細化および過酷な環境下での使用に伴い、寸法がサブミクロンからナノメートルオーダーの微小構造体が高温下に晒されることが多くなってきている。高温下では熱活性化による原子拡散やクリープが生じるため、材料の変形・破壊特性は室温下のそれとは大きく異なり、時間依存性を示す。一方、異材界面では変形のミスマッチによる応力集中が発生するため、破壊の起点になりやすい。しかし、実験観察の困難さから高温下における微小構造体の界面強度特性は解明されていない。本研究の目的は、サブミクロンからナノメートルオーダーの金属構造体の高温下における界面強度特性を実験的に評価する手法を確立するとともに、その破壊メカニズムを力学的に明らかにすることである。本年度は、まず、これまでに室温下における微小構造体の界面剥離実験に成功している原子間力顕微鏡(AFM)に横方向荷重の負荷が可能な特殊な負荷装置を組み込んだ試験装置に、購入した特製のAFMスキャナユニットと試料加熱冷却キットを組み込み、微小構造体高温強度試験装置を完成した。本装置は、試料台に加熱ステージを組み込んだもので、ステージの温度を室温〜573Kに制御できる。予備試験によりステージ温度と試料表面温度の校正を行い、試験片の温度が目的の温度になるように調整した。次に、表面を熱酸化処理したシリコン基板上に低融点金属(Sn-3Ag-0.5Cu)のミクロンオーダー構造体を作製し、上記装置を用いて室温および高温下において界面剥離実験を行った。本装置により、異なる温度域における微小構造体の界面強度試験を実施することができた。高温下の試験では、構造体の時間依存変形(クリープ)が顕著に現れ、剥離特性が室温下のそれとは大きくことなることを明らかにした。
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