先進デバイスの高機能化・微細化および過酷な環境下での使用に伴い、寸法がサブミクロンからナノメートルオーダーの微小構造体が高温下に晒されることが多くなってきている。高温下では熱活性化による原子拡散やクリープが生じるため、材料の変形・破壊特性は室温下のそれとは大きく異なり、時間依存性を示す。一方、異材界面では変形のミスマッチによる応力集中が発生するため、破壊の起点になりやすい。しかし、実験観察の困難さから高温下における微小構造体の界面強度特性は解明されていない。本研究の目的は、サブミクロンからナノメートルオーダーの金属構造体の高温下における界面強度特性を実験的に評価する手法を確立するとともに、その破壊メカニズムを力学的に明らかにすることである。 本年度は、昨年度に開発した微小構造体高温強度試験装置を用いて、シリコン基板端部に作製したサブミクロンオーダーのカンチレバー状錫構造体のクリープによる界面剥離実験を行った。単調負荷では剥離しない低荷重下においても時間の経過とともに変形が進行し、やがて界面端部から剥離き裂が発生することが分かった。また、クリープを考慮した非線形有限要素法により界面端部近傍の応力場を解析し、クリープ変形によりもたらされる特異応力場の遷移特性を明らかにした。一方、発生した界面き裂の伝播特性を評価するため、サブミクロン高分子薄膜のクリープによる界面き裂伝播試験を実施した。クリープ界面き裂先端近傍では均質材中のHRR場に類似の応力・ひずみ速度特異場が存在し、その強さは試験片寸法によらずクリープJ積分により評価できる。本試験より、き裂伝播速度は遷移状態におけるクリープJ積分によって特徴付けられることが明らかになった。
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