研究概要 |
まず炭素繊維強化プラスチック(CFRP)一方向板について各繊維配向角に対して,周波数1MHzまでのインピーダンス特性と引張負荷に対する交流ピエゾ抵抗特性を調べた。その結果すべての試験片についてインピーダンスの大きさの周波数依存性は観察されずほぼ一定であった。一方,位相角は0から45度試験片では周波数に依存せずほぼ一定であり,インダクタンスおよびキャパシタンス成分は観察されないが,60度および90度試験片では高周波数領域において位相角が負となり,キャパシタンス成分が観察された。単調引張負荷下でのひずみとインピーダンスの大きさは,直流抵抗同様複雑な挙動を示した。インピーダンスの変化は直流抵抗成分のピエゾ特性とキャパシタンス成分の変化に起因していると考えられる。次にそれぞれの特性を表現するために直流ピエゾ抵抗用の等価回路モデルを修正した新しいモデルを提案した。直流ピエゾ抵抗モデルの単位要素に繊維と直交する方向にキャパシタ要素を付加したモデルを用いて実験結果をよく表すことができた。さらにCFRP積層板を接着剤で接合した継手について,電気的ヘルスモニタリング手法の適用を試みた。シングルラップ試験片の引張試験及び疲労試験を行い,負荷中のラップ部の直流抵抗変化及びインピーダンス変化を計測した。また有限要素解析によりはく離時のひずみ分布を調べ,はく離によるひずみ変化と電気抵抗変化を議論した。はく離や変形により直流抵抗が変化するだけでなく,接合部のCFRPを電極とするキャパシタが形成されると考えることにより,キャパシタンス変化に起因するインピーダンス変化を捉えることができた。
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