研究概要 |
純鉄および純チタンのひずみ焼鈍法による結晶粒粗大化法について検討した.純鉄は数%の引張ひずみを付与した後,α/γ変態点直下の温度で数日間保持することで,粒径数十mm程度の結晶を得ることができた.また,純チタンの結晶粒粗大化に関しては,一旦α/β変態点以上の温度に試料を加熱した後,α/β変態点直下まで冷却し,変態によるひずみを導入した.その後,そのままα/β変態点直下で数日間保持することで,粒径数十mm程度の結晶を得ることができた.現在これらの粗大結晶粒試料から疲労試験片の作製準備中である.2本の試験片の試験部に同一の結晶を含むように切り出し,水素チャージの有無によって疲労き裂伝播挙動の比較を行う.なお得られる試験片寸法が小さいため,疲労試験には小型の板曲げ式疲労試験機を用いる. 一方,水素の疲労き裂伝播に対する挙動を予め調査するため多結晶材料を用いて検討を行った.フェライト-パーライト組織を有する中炭素鋼における実験では,水素チャージにより疲労き裂伝播速度に変化はないものの,すべり帯の形態が著しく変化することがわかった.また,面心立方構造を有するオーステナイト系ステンレス鋼を用いた実験では,水素チャージによりき裂伝播が加速されることがわかった.またすべり帯の分布にも変化があった.このように組織が異なる材料では疲労き裂伝播に及ぼす水素の影響が異なるため,結晶構造の異なる2種類の単結晶を用いた研究で,塑性変形モードの違いと水素の影響について明らかにして行く.
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