本研究の目標の1つである非線形圧電材料を用いた超音波の位相共役波の高出力発生研究を主に行なった。位相共役波の発生に介在する3次非線形圧電性の測定は、比較的線形圧電性の大きなPZTセラミックスと圧電・誘電効果の高いリラクサ型圧電セラミックスを対象とした。小さな薄板伸び振動子を作成し、その共振周波数で振動させておき、交流電界を印加した場合の音速度変化率を測定した。その変化率から位相共役波発生の起因となる3次非線形圧電定数を見積もった。今回測定したリラクサ系の圧電セラミックスの非線形圧電性は数種類のPZTセラミックスと比較して数倍の大きさであった。また、薄板振動子の共振曲線からセラミックスの吸収係数を見積もった。入射超音波に対して発生した位相共役波の比をもって定義する発生効率は、非線形圧電性に比例し、吸収係数に反比例する。吸収係数を考慮した結合方程式を用いて理論的な位相共役波の発生効率を計算した。 超音波の周波数5MHzに対して2倍の周波数の10MHzのポンプ電界をPZTセラミックスに印加して位相共役波発生実験を行なった。入射波に対して1/2程度の振幅の位相共役波の発生に成効した。PZTセラミックスに高電界を印加する際の温度上昇を抑えるために冷却設備を導入したが、長時間の発生実験では材料に劣化が見られた。発生効率に影響を与える傾向があるために、発生実験系の改良が必要である。また、位相共役波を水を介して発生させるために、音響整合層の検討を試みた。
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