研究概要 |
一般に,穴加工とは直穴加工のことと認識されていることからわかるように,実用化されている除去加工法によって形成できる穴形状の自由度は低い.したがって,製品の設計・製造では,単純な穴形状を駆使することにより要求を満たしている.しかし,このことによって生じる問題には妥協せざるを得ない.この現状を逆に考えると,複雑な穴形状の加工が可能になれば,このような問題に甘んじることはなくなり,さらには,高付加価値製品を生み出せる可能性があることを示している.そこで本研究では,穴内面の任意位置に任意形状を放電加工により創成する新技術を開拓し,それを用いて,断面が複雑に変化する穴形状を創成することを目指している.本年度は,以下に示す成果を得た. 1.並進可動軸をもつハードウェアの開発 本研究では,穴内部において電極が運動する軌跡の包絡形状が加工形状となるが,従来のスライダクランク機構を応用した機械部品だけで構成される装置では,穴内面に円弧形状しか加工できなかった.そこで,電極の運動を多様化するために,並進可動軸を付加した装置を開発した.この装置を用いて,従来の装置では加工不可能であった円弧と直線から成る形状を穴内面に創成することができた. 2.ソフトウェアの改良による加工形状の複雑化 当初,開発した装置において,電極運動軌跡を制御するソフトウェアは,電極の先端を円弧および鉛直線上を通過するような運動しか実現できなかった.そこで,電極運動軌跡すなわち加工形状を多様化できるように,ソフトウェアを改良した.その結果,穴内面に円弧とアステロイド曲線から構成される形状を加工することができた.
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