研究概要 |
単結晶ダイヤモンド工具で,チタン,超硬,炭化物系アルミナセラミックスを微小切削した際の工具刃先温度の測定を行った.切削速度は12〜24m/s,切込みは2μmであり,切削長さは12.8mm,切削中の切込みは一定である.フッ化物ガラス光ファイバとInAs/InSb赤外線検出2色素子とを組み合わせた温度計を製作し,使用した.ダイヤモンドは赤外線に対して透過性を有しており,切りくず生成中に工具と切りくずの接触面から放射された赤外線は工具内を透過する.その赤外線を工具底面からダイヤモンド底面まで開けた穴にあらかじめ挿入した光ファイバによって受光し,赤外線検出素子に伝送することにより工具刃先温度として測定する.InAs/InSb素子の出力比から温度に換算するため,測定対象が微小な場合でもその面積の大きさによらない温度測定が可能である.チタンを被削材とした場合,各切削速度における刃先温度は400〜580℃であり,切削速度の増加とともに上昇した.刃先温度は切削開始直後にほぼ定常値まで達し,切削中の温度はほぼ一定である.同一条件で超硬を切削した場合の刃先温度は860〜1400℃であり,極めて高い温度に達していた.刃先の熱損傷を電子顕微鏡で観察したところ,大きな欠けや摩耗は生じていなかった.工具刃先には微量の凝着物が確認され,EDX分析したところ,被削材と同一成分のWとCoが検出された.被削材に残された切削条痕を観察したところ,き裂は生じていなかったが,条痕のエッジ部では結晶粒界に沿った破壊が生じていた.炭化物系のアルミナセラミックスを被削材とした場合,工具刃先温度は800〜900℃であった.セラミックスを被削材とした場合では,切削速度を増しても刃先温度の増加の割合は小さい.被削材に残された切削条痕にはき裂が残留しており,切り込みが2μmでは脆性的な破壊形態であった.
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