研究概要 |
大面積パルス電子ビーム照射法を用い,生体材料用チタン合金製品の高能率表面仕上げ技術を確立するために,まず,大面積電子ビーム内でのエネルギー密度の分布について計測した.そして高能率な表面平滑化を可能とする最適照射条件について検討を行った.その結果,以下の結論を得た. 1.直径100mmの大面積電子ビーム内では,ほとんどの条件でビーム中心部がエネルギー密度がもっとも高くなるが,最適なアルゴンガス分圧,電子銃と試料との距離,ソレノイドへの印加電流およびカソード電圧の条件下では,声よそ直径60mm内でほぼ均一なエネルギー密度分布が得られることを見出した. 2.ビームのエネルギー密度,および照射回数が照射後表面粗さに影響することを明らかにした.すなわち,エネルギー密度が高いほうが平滑化の効果が高いが,高すぎると平滑化の効果は低下するため最適値が存在すること,および,照射回数の増加に伴い急激に表面粗さが減少し,最小値をとった後は照射回数を増やしても表面粗さは減少しないことが明らかとなった. 次に,照射前の表面粗さの影響について考察し,以下の結論を得た. 3.照射前の表面粗さが10μmRz以下の荒さであれば,わずか数分で1μmRz以下にまで平滑化が可能である.また,それ以上の照射前表面粗さでは,凹凸を除去できない. 今後,照射面や断面の詳細な観察,照射最表面の分析を通して,表面平滑化のメカニズムについて検討を行う.また,チタン合金以外の生体材料に対しての可能性を検討しつつ,表面改質効果についての検討を行っていく.
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