研究課題
機械工学におけるトライボ現象は、しばしば、金属界面で起こることが多いが、通常の可視光や電子線、X線などは金属を透過させることができないため、それら界面で起こっている現象を直接観察することは難しい。また、潤滑油を構成する元素は基本的には軽元素であるため、X線での構造解析は困難である。そこで、本研究では、金属を透過し、また、軽元素に対しても作用しあうという特長を有する中性子線を用いることによって、トライボロジー現象の新しい評価法を提案した。本年度は、具体的には、(1)中性子反射率法を用いた界面形状の観察、(2)中性子反射率法を用いた薄膜潤滑油の膜厚測定、(3)中性子回折法を用いた炭化水素の構造解析、の3つのテーマに焦点を絞り、日本原子力研究所MINE、高エネルギー加速器研究所ARISA、HITの3ビームラインにおいてそれぞれ実験を行った。その結果、(1)に関しては、たとえ金属間界面であっても、反射率プロファイルに現れるフリンジの間隔から界面面粗さのオーダを推定することができ、また、そのラフネスが周期的であれば、回折情報からその周期を推定しうることが分かった。(2)に関しては、得られる反射率プロファイルから、nmオーダの潤滑油薄膜の膜厚を正確に見積もることができることを示した。また、(3)に関しては、回折法を用いることによって、金属容器内であっても炭化水素分子の動径分布関数を得ることが可能であることを示した。これら一連の研究より、トライボロジー現象の観察における中性子散乱法の有用性を示すことができたと考える。また、X線反射率計による測定結果と比較検討を行うことにより、表面吸着層のより詳細な構造を推定し得ることも分かった。
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