研究概要 |
本研究では,光コヒーレンス・トモグラフィの原理に基づいて,トレーサ粒子の運動に伴うスペックルパターンの変化から,深さ方向の位置が高い分解能で特定された断面における流れ場の計測を目指す.本年度は,1.干渉光学系,2.ミラーシフト機構,3.撮影システムの構築を行った. 1.干渉光学系:低コヒーレンス光であるSLD光源(7.5mW,中心波長835nm,バンド幅50nm)から光ファイバーで導いた光をコリメートし,ビームスプリッタと参照鏡および測定物からの反射光によってマイケルソン干渉計を構成した. 2.ミラーシフト機構:参照光の光路長を変化させるため,ハーモニックドライブ機構の微動ステージを用いて参照鏡を0.02μmの分解能で前後にシフトできるようにした. 3.撮影システム:スペックルパターンは,無限補正対物レンズと結像レンズ,および赤外光のみ透過するロングパスフィルターを用いてCCDカメラで撮影され,画像入力ボードを介してパソコンに取り込む. 本装置の動作確認を行うため,すりガラスの面内の移動および流体中の懸濁粒子の沈降に伴うスペックルパターンについて調べ,以下の知見を得た. 1.参照光とすりガラス表面からの反射光の光路差が一致した状態でスペックルパターンの移動が検出できた.この状態から参照鏡のシフト量が±20μmまではスペックルの移動を確認できるが,シフト量が±40μm以上になるとスペックルの移動は確認できなかった.これは,厚さ約40μmの断面内の情報を捉えていると言え,SLD光源のコヒーレンス長50μmとほぼ一致する. 2.二酸化チタンの懸濁液を用いて,懸濁粒子の沈降に伴うスペックルパターンの移動を捉えることができた.インターフェログラムを測定することによって透明容器内壁からの反射を捉え,測定断面の壁からの相対位置を特定することができた. 今後,流路内の流れの測定への適用を予定している.
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