化学・医薬品工業での代表的な固液分離操作の一つである晶析操作は、主に(a)溶液中の溶質濃度が飽和濃度より大きくなる場合に起こる「一次核発生」、(b)結晶粒子と撹拌翼・槽壁との衝突により起こる「二次核発生」、(c)結晶表面への溶質物質の取り込みにより起こる「結晶成長」の三要素が乱流場中で重畳した非常に複雑な現象である。 本研究では、撹拌槽を利用した冷却式溶液晶析操作における、結晶製品の高度な品質予測・制御を可能とする流動場・晶析反応場の数値流動解析手法の構築を目的とした。平成16年度は塩化カリウムの冷却晶析をモデルケースとした。得られた知見は以下の通りである。 (1)「結晶と撹拌翼・槽壁との衝突に起因する二次核(微結晶)発生」のメカニズムに関して、数値流動解析により撹拌槽内の乱流状態・粒子挙動の定量的な評価に基づいて、結晶の衝突頻度、衝突エネルギーの解析を行い、撹拌翼の上部で衝突頻度が大きくなることがわかった。また結晶摩耗現象の数値モデルの構築に必要な実測データを取得するための結晶摩耗実験の予備検討を行った。 (2)「溶質の局所的な過飽和度の増大(局所的な低温度状態)に起因すると想定される一次核発生」のメカニズムに関して、一次核の発生温度(過飽和度)と撹拌翼回転数の間に相関性があることを明らかにした。また、レーザー光を用いて一次核の発生をin situに検出する計測システムを改良し、光学系・受光システムの変更・最適化により大幅な感度の向上を実現した。 次年度は、今年度の実績をもとに、CFDに組込み可能な信頼性の高い核発生現象の数値モデルの開発を進める。
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