研究概要 |
固体と気体が入り乱れて存在する流動場(固気二相流)は,工業プラントや製薬,加工,気象などの幅広い分野に,様々なスケールをもって現れる.しかし一般に相間相互作用のために複雑な流動様式を取り,異なるスケールの流れ場に共通する法則を見出す事は難しい.本研究では固気流れ場に適した全体安定性解析を用い,粒子近接場から遠方場までの幅広いスケールに渡る固相=気相 相互作用の特徴を,固有モードとして特定することによって,粒子を含む流れ場の階層構造を明らかにする事を目的とする. 報告者はまず,提案した全体安定性解析の性質を調べる目的で,当手法を単一球形粒子が存在する空間発達流れ場に適用し,空間非対象性および間欠性をもつ渦のモードを妥当に予測できる事を示した. 続いて解析対象を非球形粒子へ広げ,新たに提案する座標変換法を用いた非球形粒子の後流の全体安定性解析を進めている.非球形粒子周りの流れは工学的および実用的な観点から関心が高いが,これまでその研究は理論的・実験的にも乏しい.したがって本研究で,流れ場の特徴が物体形状により系統的にまとめられ,貴重なデータを提供できると考えている. また報告者は,複雑形状物体の周りの流れを高速で解くための手法を新たに提案した.一般に物体の形状が複雑で表面積が大きいほど,固体表面と流体の相互作用の計算時間は長くなる.この問題は,実用的な粒子個数で固気二相流の高精度計算を行なう上での障害となっている.本研究では,より簡便なアルゴリズムを提案し球状物体に適用した結果,その計算時間を56%削減できる事を示した.その計算手法を,三日月形の物体と流体の連成問題に適用したところ,流体力による物体の共振現象,自由落下時の回転・揺動運動など,複雑な現象を,少ない計算負荷で再現できた.これらの結果は,別途行なわれた高精度解析の結果と良い一致を示しており,異なる計算法どうしの整合性を確認できた.
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