研究概要 |
音場で単一燃料液滴を自発点火させる実験装置を作成した.外周に巻いた電熱線により内径62.3mm,長さ500mmの円筒状の金属管を加熱し電気炉とした.金属管の片端に設置したスピーカにより定在音波を電気炉内に発生させた.十分な断熱の結果,両端開放ながら中心部の雰囲気温度を900Kまで上げることができ自発点火を観測するのに十分となった.懸垂線に支持された直径約1mmの正デカン液滴がステッピングモータにより瞬時に電気炉内に挿入される.CCDカメラにより点火遅れが計測された.雰囲気温度900K,音波を発生ない条件で点火遅れは約0.8sであった.音速は温度に依存するため,電気炉を設定温度に加熱した状態で共鳴周波数を調べ,それらのうち2514Hzと3744Hzを定在音波の発生に選んだ.これらはとなり合ったモードのため,電気炉中心の液滴位置は一方は節,他方は腹となる.結果,2514Hzでは点火遅れは長くなり,3744Hzでは短くなった.定在音波の影響として考えられるのは圧力変動の影響(節で最も顕著,腹でゼロ)および雰囲気の粒子速度変動の影響(腹で最も顕著,節でゼロ)である.前者は通常の音圧ではほぼ影響がないと推測される.後者は液滴が腹にある場合は拡散促進の効果を与え,節にある場合影響はない.このため,Tanabe et al.が発見した,音響振動と密度差の干渉によって生じる対流の影響が示唆される。また,音圧レベルを110dBから125dBまで変化させたが,その影響は単調ではなく解明が要される. 過去の研究で用いられた定圧での液滴点火の数値計算モデルが変更され,閉鎖定容空間での圧力上昇を伴う現象の再現が可能となった.(成果は英文論文として2005年に発表される.)さらに空間の容積が可変となり(成果は2004年に国内の学会で発表された.),今後,節での液滴点火を模擬するモデルへの発展が可能となった.
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