研究概要 |
初年度であるH16年度では,マイクロチャネル内を流れる脈動流における非ニュートン流体の流動特性に関する実験計測に向けて,マイクロPIV計測システムの立ち上げと脈動流の生成系の構築,およびマイクロチャネルの製作を行った.チャネルはPDMSを材料として製作し,ストレートチャネルおよびバックステップを伴うチャネルについて定常流れでRe=1〜100の範囲内での計測を行った.これにより得られた結果を解析解と比較することにより,マイクロPIVシステムの精度を検証するとともに,システムの更なる改良を行った.最終的には,100〜200μmの大きさのチャネルでは解析解との誤差は数%以下という精度を確立するまでに至った.また,独自に数値解析コードの開発も行い,非構造格子に基づいた3次元層流流れについて数値解析が行える段階に至った.コードの妥当性は,理論値や他の研究の実験値と比較するいっぽうで,前述の定常マイクロチャネル内バックステップ流れの測定から得られた3次元速度場やステップから剥離した流れの再付着点位置とも比較することで確認を行った.これらは良好な一致を示し,マイクロ効果や非ニュートン流体に関するモデルを導入する前段階までコードが完成されたといえる. 脈動流はマイクロシリンジポンプの駆動をステップおよび正弦波形状に変化させることにより高い時間分解能で生成し,ストレートとバックステップチャネルについて実験を行い,流れ場の計測を行った.実験した脈動流の周波数は0.1〜0.5Hzであり,Womersley数に直すとWo<0.2であることから,一般に粘性支配の流れであり,圧力波と流れの間および主流方向断面内の各位置間で位相差が存在しないとされている.これに基づいて算出した理論値との比較において,速度場は定性的にはよい一致を示したが,実験では位相のずれおよび振幅の減少なる現象が観測され,その原因を特定する必要がある.これらの結果は第42回日本伝熱シンポジウムで発表する予定である.現在は,実際に非ニュートン流体(界面活性剤など)を用いて定常・脈動流に関するマイクロPIV計測を行う予定である.
|