切断加工での適用が難しい半導体レーザを、光エネルギ吸収・発熱と溶融樹脂の除去に関する熱移動および光学系を検討し集光技術を改善することで、簡易で低コストな精密レーザ加工技術を実現することを目的とし、まず第一に樹脂部材を対象として、その吸収特性の違いが加熱に及ぼす影響について、熱伝達解析を行い、特に加工可能な部材肉厚との関係を検討した。さらにレーザー集光形状の変更が加工特性に与える影響についても検討を加えた。具体的な研究成果としては、ビームスポット円形の波長808nmの半導体レーザ(出力30W)を光源にして切断装置作成し、レーザーエネルギーの吸収加熱についての基礎的な実験検討を行った。先立っての熱移動解析により、吸収係数の与える加熱の影響は、高吸収ではピーク温度は高いが肉厚方向の温度上昇には影響が小さいことを確認した。そして切断加工としては本装置の能力的に、充分な赤外線吸収率を示し肉厚1mm以下であれば切断は容易で、切断後の部材切断幅もほぼビーム径と同じ1mmであった。このビーム照射条件にて、エアジェットのノズル径の影響を検討し、ビームスポットと同径のノズルの使用において、切断幅および切断面傾斜角が最適になることを確認した。さらにライン状ビーム(18×1.2)を形成するレーザー集光機器を作成し、肉厚1mm以上2mm以下の板材を切断することが可能となった。また、この検討に付随して、レーザー加工の応用として難接合部材の溶着加工も検討した。特に透明部材および不織布に対して、赤外線吸収色素塗布により重ね合わせ接合を可能にし、最適加工条件を検討した。
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