研究概要 |
本研究は、切断加工での適用が難しい半導体レーザを、光エネルギ吸収・発熱と溶融樹脂の除去に関する熱移動および光学系を検討し集光技術を改善することで、簡易で低コストの精密レーザ加工技術を実現することを目的としている。 研究結果としてまず第1に、透明樹脂部材にフタロシアニン系有機顔料色素からなる赤外線吸収を高める表面被覆を施し、この被覆のレーザ吸収特性の違いが切断に及ぼす影響について、特に加工可能な母材肉厚との関係を検討した。切断実験および熱移動数値解析から、表面被覆のみの発熱では、1mm以上の厚肉の部材(透明PET材)を裏面まで溶融させることは困難で、その効果が、非常に薄い部材の場合に限定されることを確認した。これを改善するために、レーザ照射により除去されて新規に現れる材料表面に適時に赤外線吸収色素を微少量(約59μm^3/s)塗布することで、課題を解決した。 第2に、ノズル内でレーザ光とウォータージェットを同軸に射出することで、水と空気界面での全反射による遠方への平行導光を可能にし、これによりワーキングディスタンスの拡張及び加工性能の向上を図った。具体的な検討項目としては、射出ノズル寸法・形状、ウォータージェット水圧、レーザビーム強度をパラメータに黒色樹脂部材(PMMA,肉厚1mm)に対する加工特性を調べた。その結果、レーザを導光するウォータージェットの直径はビーム集光の最小径0.7mmに絞り、かつ、ウォータージェットの直進性を保つオリフィス部(φ0,7-2mm直円管)として、通常焦点距離47mmの状態から、最長160mmまでのワーキングディスタンス延長を可能にした。
|