研究概要 |
近年,ナノテクノロジーと熱工学の融合分野において,ナノ微細構造が壁面付近での伝熱促進技術の鍵として非常に注目されている.シリコン微細加工技術を用いて作成されたナノ微細構造が基板の撥水性あるいは親水性を強化でき,また多孔質体のナノ構造物が熱伝達率を著しく向上させた実験結果が報告されている.これらの現象を解明するには,界面の物理化学を含めた分子の理解が求められている.本研究では,ナノ伝熱のメカニズムを解明するための基礎研究として,まず分子動力学法を用いてナノ微細構造による界面濡れ性の変化のメカニズムを解明することを試みた.数種の微細凹凸構造を持つ固体壁面を対象とし,液滴の接触角の観察から界面濡れ性がどのように変化するのか,またどのような表面微細構造が親水性あるいは疎水性界面形成に有効なのかについて検討した.すなわち,固体表面のナノ構造が見かけの接触角度に与える影響を分子動力学シミュレーションにより検討した.その結果,完全濡れの表面に対しては影響が小さく,ナノ微細構造を加えても接触角度に大きな変化が現われなかったものの,部分濡れの表面に対して影響は著しく,液滴の接触角度はナノ微細構造のサイズや形状等によって変化することを確認できた.界面における微細構造を制御することによって撥水性を向上できると考察するとともに,表面構造と見かけの接触角に関する従来の理論式であるWenzelの式が不完全であることを検証した.
|