| 研究概要 |
微細管内の流れを制御するアクチュエータの開発は,マイクロマシン技術の進展をもたらすのみならず,人体における血流の促進など,生体医用技術の高度化にも繋がる重要な課題である.本研究では,柔軟弾性体の座屈現象を利用した,機構的に単純かつ信頼性の高いアクチュエータを開発することを目的とする.具体的には,流体が流れる柔軟微細管の近傍に,両端を軸方向に圧縮することで得た座屈後はりを配置したモデルを考える、電磁力により,はりの横方向へ外力を一時的に作用させると,はりは動的に飛び移り,もう一つの安定な平衡状態へと移行する.この結果,管路の断面積が変化する.このアクチュエータは,単独で用いれば流量調節弁として機能する.また,複数個を並列で用いて開閉のタイミングを調節すれば,一定方向に流れを生じさせることもできる.
本研究では,前年度の弁の試作結果を受け,同種のアクチュエータを複数個並列で用いたポンプの相似模型を試作した.アクチュエータを駆動する電磁石の巻数を変え,はりが飛び移り座屈を生じる入力電圧値が異なる複数のアクチュエータを設けた.このアクチュエータに鋸波状の電圧信号を印加することで,開閉のタイミングを調整した.ポンプとしての動作確認を行うとともに,入力条件を変えて性能の評価を行った.続いて,ポンプの性能を理論的に評価することを目的として,流れ場とはりの運動,電磁場についての連成数値解析コードの開発を試みた.今年度は,流体運動の移動境界問題について,境界適合座標系を用いた有限差分MAC法を適用し,プログラムコードの制作を行った.
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