研究概要 |
薄板構造物の設計では,折り曲げなどの加工は主に相対的な剛性を向上させるために施されたものであるため,これらの加工には振動特性や音響特性などの動特性は考慮されていない.一般的には,薄板構造物の動特性は,有限要素法(FEM)などで解析することは可能であるが,薄板構造物に対して任意の動特性を持たせるための設計指針を示すことは困難とされてきた.そこで,本研究では薄板構造物の折り曲げ部をモデル化し,動特性を考慮した薄板構造物の最適設計法を開発することを目的とする. 本研究では,折り曲げが構造物の固有振動数,振動モード形などの動特性に及ぼす影響を調べるために,薄板構造物を対象としたFEM,及び振動実験による解析を行った.ここでは,折り曲げの種類,位置,支持方法について検討した.薄板構造物は,大きさが300mm×365mm,厚さ0.5mmの鋼製とした.折り曲げの種類は直線,曲線など9種類,折り曲げ位置は平板の中央など2種類,境界条件は周辺自由など3種類とした.FEMによる解析結果では,薄板構造物に折り曲げが施されることで特定の固有振動モードでは振動振幅が非常に小さくなる領域が存在することがわかった.また,これは境界条件や折り曲げ位置の影響も受けることが明らかとなった.次に,これらを振動実験により検証した.薄板構造物はFEMと同様のものとし,折り曲げの種類は直線,曲線の2種類,境界条件は周辺自由とした.実験により得られた振動モード形では,FEMによる解析結果と同様に,振動振幅が若干小さくなる領域が存在することが確認できた.FEMと振動実験で得られた結果に若干の違いが生じたが,これは供試体の折り曲げ方法,位置などの影響によるものと考えられる.また,本研究では振動モード形と加速度計の位置が重要となるため,これらについて基礎的な検討を行い,フィルタの設計を試みた.
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