研究概要 |
本研究では,測定条件に依存しない粘弾性係数として,生体表面の硬さをin-vivoで瞬時に測定する手法の確立を目指している.これまでに,生体表面に接触子を押しつけ,速度正帰還によって発生する自励振動で加振することで,生体表面の接触動剛性(ばね定数,粘性減衰係数)が瞬時に測定できることを示した(自励駆動法). 本年度は,自励駆動法で求めた動剛性から,押しつけ荷重や接触子の曲率半径などの測定条件に依存しない粘弾性係数を導出する手法について検討した.接触子(金属)と生体表面(軟物体)の接触変形問題が,Hertzの接触理論で表し得るとして弾性係数を導出することにした.また,弾性論であるHertzの接触理論に弾性-粘弾性対応原理を適用し,粘性係数を導出することにした.まず,接触子を生体表面に押しつける強さ(押しつけ荷重)と動剛性,粘弾性係数の関係を接触子の曲率半径を変えて調べた結果,動剛性は押しつけ荷重の1/3乗に比例して大きくなり,粘弾性係数は押しつけ荷重や接触子の曲率半径によらずほぼ一定値として求めることができた.これは,Hertzの接触理論から予測される結果と一致しており,金属と軟物体の接触における変形問題に,Hertzの接触理論が適用できることが示された.次に,粘弾性係数が定量的に正しく求められることを確認した.提案する手法では,接触子と測定対象の接触変形が局所変形となる.そこで,生体表面の粘弾性硬さに近い試験片を用いて,接触子と試験片の接触変形が一様変形となる場合の粘弾性係数を測定し,これを比較対象とすることで,提案する手法で求めた粘弾性係数の妥当性を検証した.その結果,これらの粘弾性係数はほぼ一致し,本研究で提案する手法の妥当性が確認できた.
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