研究概要 |
【目的】本研究では,FESによって特定の筋を機能させたとき,手先位置の3次元空間において,どの方向にどれだけの力を発生できるかを計算できるシミュレーションモデルを構築する. 【方法】健常青年男性のCTより得られたDICOMデータをもとに,骨関節・筋肉・靱帯よりなる3次元上肢筋骨格モデルを作成した.モデルには尺側手根屈筋(FCU),尺側手根伸筋(ECU),短橈側手根伸筋(ECRB),長橈側手根伸筋(ECRL),橈側手根屈筋(FCR)の5つの筋を使用した.筋のパラメータについてはGregoryらの研究データを使用した.そして,筋の力学モデルに上肢剛体リンクの運動シミュレーションを適用し,FES刺激時の動的荷重下における上肢運動を解析した.また,ロボット・マニピュレータの機構解析に用いられる動的操作力楕円体という概念を用いて,手先位置の運動特性を評価した. 【結果】手関節伸展筋の刺激シミュレーションを行った結果,ECUのみに活動状態を与えた場合,ECUとECR両方に活動状態を与えた場合共に手関節の伸展運動を確認することが出来た.伸展時の動作に関して,ECUのみに活動状態を与えた場合は,手関節が尺骨側に引っ張られるように伸展するのに対し,両方に活動状態を与えた場合は比較的まっすぐに伸展が起こった.またECUのみに活動状態を入力するよりも両方に活動状態を入力するほうが少ない活動状態で手関節の伸展を行うことが出来た. 【結論】本研究で作成した手関節モデルでは,指の動きなどを固定してシミュレーションを行ったが,実際にFES治療行う際には,屈曲拘縮の治療以外にも電気刺激と腱の固定効果を利用して物を握るtenodesis graspと呼ばれる握り方を用いて握る動作を再建する治療なども行われている.そこで,今後は指などの可動が可能なモデルを作成し,tenodesis graspの成否の検討や,最小の刺激で最も強くtenodesis graspを得られる筋の検索などを推定できるモデルを作成していく予定である.
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