ユーザの全周囲の力覚呈示を実現し、ユーザの物体認識精度への影響を定量的に評価するために、ユーザの指先に精密な力覚呈示を可能とする広可動域力覚呈示装置の開発および円形軌道移動機構設計を行った。 開発した広可動域力覚呈示装置は、3自由度のパンタグラフリンク機構である。これは、任意の方向の力ベクトルを呈示出来ることと没入型ディスプレイとの併用時に装置が映像を隠さないという2つの条件を考慮したものである。没入型ディスプレイとの併用時にはリンクが視点位置から見てユーザの腕の陰に入るよう取り付け位置を決定した。 装置の機械的側面の評価として、可動範囲の評価と計測精度および力覚呈示によるバーチャル物体のなぞり実験を行った。可動範囲は、人間の通常作業域(肩を中心とした約400mmの球の内部)をカバーしていることが確認できた。計測精度は理論上は0.1mm以下であったが、実際には装置を固定するフレーム(高さ1300mm)と地面との固定に問題があり、把持部分で数mmの誤差が生じた。これについては円形軌道移動機構との固定を頑強にすることで解消させる。バーチャル物体のなぞり動作においては、400mm立方のバーチャル物体を呈示し、最大525gfの並進力を呈示できた。20mm程度のめりこみが発生することがわかったが、物体の認識は正確に行われていることが確認された。さらにユーザの感想から、アームがそれほど気にならないことも確認できた。現在、装置基部の高さは固定されており個人の身長差は考慮されていない。映像との組み合わせによってこの問題が顕在化した場合は視点位置に応じた昇降機構などを検討する。 今後は、円形軌道移動機構の完成し、全周囲でのポインティング精度の測定、視覚刺激との統合システムを開発する予定である。
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