昨年度開発した、人間の骨格構造に合わせた機構により広可動域を実現した力覚呈示装置全体をユーザの動きに合わせて移動させる円形軌道移動機構を開発した。直径1.6mの円形のレールの上に内径1.3mの穴の空いた外歯車を設置し、ユーザはこの中で操作を行なう。力覚呈示装置をカーボンファイバーのチューブ先端に配置し、根元を外歯車に3点接地で固定している。これによって力覚呈示装置先端部分のしなりを最小限に食い止めることが出来た。外周に設置したACサーボモータによって、外歯車全体を回転させ、ユーザの周囲の任意の方向に力覚呈示装置を移動させることが可能となった。実際の動作としては、力覚呈示装置先端の位置が、力覚呈示装置の固定点から見た可動範囲から水平60度以内(スイートスポット)では、力覚呈示装置のみで可動範囲内のユーザの動作に対応する。それよりも外に出た場合は、先端がスイートスポット内に戻るように、装置全体を回転させる。ユーザの追従実験から、HMD等の視覚呈示装置と併用して用いた場合でも、20度/秒の速度で回転してもユーザに回転していることを感じさせることなく追従できることが分かった。次に、ユーザの周囲でのポインティング精度を計測する実験を行なった。ユーザの正面および側面に7段階の高さに、吸い込み点(力覚呈示装置先端を近づけると吸い込むような力を呈示する点)を配置し、指定された場所をポインティングさせた。この結果、正面および側面の間でポインティング精度およびポインティングにかかった時間ともに特に有意差は認められなかった。これは本装置は正面だけでなく側面を用いたVR空間操作インタフェースを構築可能であることを意味しており、全周力覚呈示環境によって、従来の正面のみのインタフェースを用いた環境と同等かそれ以上の性能を有する操作インタフェースの設計指針を示すことが出来た。
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