研究概要 |
圧電素子は,超音波帯域の高周波振動を励起するもっとも一般的なアクチュエータである.本研究では,ステータの面内超音波振動の法線方向変位成分によって生ずる音響放射圧によって,搬送品を浮揚させる同時に,ステータ接線方向に伝播するたわみ進行波によって,搬送方向に流れる音響粘性流を発生させ,音響流とロータの速度差に応じた粘性力としてスラスト力を移動体に伝達するものである. 本年度は,駆動周波数21.2kHzにおいて周方向に波数6山で半径方向に節円を持たないステータを有限要素法による動解析を援用して設計を行った.その結果,直径φ80,厚さ3mmのアルミニウム製円板を製作して,これに適切に分極処理をした圧電素子を接着したステータを製作した.ステータの振動分布を測定した結果,理論通りの振動状態を得ることができた.100Vの交番電圧を圧電素子に印加したとき,ステータ外周部における変位振幅は,1〜2μm程度であり,定在波比は8であった.この状態で,8cmCDをステータ表面に載せると,CDは100μm程度浮上した状態で,180rpmで回転した.静止状態から励振を開始した後の,回転速度の時間変動を測定した結果,20秒程度で定常速度に達するが,終端速度は駆動振幅に強く依存することがわかった.これより,駆動振幅の大きなステータ設計が,移動特性向上に必要であることが確認された.今後は,回転型特性実験装置を用いて,移動特性について詳細な検討を行う.
|