研究概要 |
近年,内視鏡技術の発展により,最小切開の低侵襲手術が様々な外科領域に適用されている.内視鏡手術は1)人体表皮の拘束による独特な手術器具操作,2)深度覚がない内視鏡の拡大視野,3)内視鏡担当の助手との意思疎通の難しさ,4)内視鏡視野外は全て死角,などから専門訓練が必要で,術者への技術的・精神的な負担は大きい.また,症例増加に伴い,手術事故が増加傾向にある.加えて,熟練専門医による実地手術教育が追いつかず,実践的な訓練システムの導入が急務である.そこで,低侵襲手術における事故原因究明システム,及び定量手術データを利用した手術訓練システムを開発してきた.前者は,航空機のフライトレコーダの概念を手術室に取り入れ,腹腔内手術の全情報を時系列デジタル記録できる「サージェリレコーダ」,後者は,ロボット機構によるデータ再現,手本の追体験ができる「力覚付きバーチャル手術訓練システム」である. 本年度は,サージェリレコーダのコアツールである,術者の手術スキル収集用鉗子を最適試作した.位置・姿勢6自由度,力・モーメント6軸力を測定可能である.力センサが把持ハンドルとアウターチューブの間に装着する中空構造に変更し,ハンドル-先端グリップ間の把持力伝達機構が問題なく機能するようにした.また,熟練医による生体ブタを用いた機能検証実験を行い,サージェリレコーダの有効性を実証した.今後,手術データ鉗子のユーザビリティ強化とともに,膨大な時系列手術データから特異データを検出し,その周辺データを含め抽出,蓄積するデータマイニングシステムの基礎的研究にも着手する. 最後に,設備備品の高圧電源は,本手術訓練システムの基礎開発に必要なため購入した.
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