研究概要 |
結び目は,単に特定の形状を生成するだけでなく、何箇所かの部分を引っ張ってしっかりと締め付けることにより、初めて固定等の機能を発揮する。本研究では、結び目形状を生成する操作を結び操作、生成された結び目を締め付ける操作を締め操作と呼ぶことにする。また、結び操作と締め操作とを合わせて締結操作と呼ぶ。ある結び目が締結できるか否か、締結できるとしたらどの部分を引っ張ればよいかは、結び目の位相によって異なる。そこで本年度は、昨年度行った結び操作の定性的計画手法に加えて、締め操作の定性的計画手法を提案した。まず、線状物体の締結可能性を定義し、定性状態表現すなわち位相形状から、締結可能性を判定する手法を提案した。締結可能な場合には、両端だけを引っ張れば締結できるのか、その他の部分も引っ張る必要があるのかについて、昨年度導入した四つの基本操作が適用できるか否かという観点に基づいて、位相形状から判定する手法を提案した。これにより、結び目の締結のために引っ張るべき部分を計算機により自動導出できた。昨年度より本研究で提案した手法により、ロボットシステムによる締結操作の自動計画と実行が可能となり、実際に構築したシステムにより、引き解け結びの締結操作を実現できた。また、本研究で提案した手法について考察を進めた結果、並進3自由度と回転1自由度を有する単腕ロボットにより、線状物体のある部分を他の部分に繰り返し重ねていくことで任意の結び操作が実現できることが分かった。これはすなわち、人間とは異なる構造や機構を持った機械システムによっても、任意の結び操作が可能であることを意味する。 また、線状物体に対する定量解析として、障害物や物体自身との接触までを考慮した動的変形モデルを提案し、実験とシミュレーションの比較により妥当性を確認した。これにより、より一般的な作業空間中での線状物体の変形形状の予測が可能となった。
|