研究概要 |
本年度は触診シミュレータを構築するための力覚呈示装置を開発し,接触点検出手法の構築,および接触点方向へのコンプライアンス呈示手法について実験的に検討した.具体的な内容を以下に示す. まず,力覚呈示部となる空気式パラレルマニピュレータを構築した.駆動リンクには直動変位を容易に得られる低摩擦タイプの空気圧シリンダを採用し,それを6本並列に配置したスチュワート型の構造とした.また,印加力を測定するために上部プラットフォーム中心部に6軸力センサを設置した. 次に乳房の形状モデルを設計した.これは3Dグラフィックソフトを用いて行った.設計時に出力されるCADデータの一種であるDXFデータに基づき,OpenGLを用いたグラフィック環境内において接触点を求める手法を確立した.接触点検出の誤差は2mm程度でありさらなる検出精度の改善が望まれるものの,任意の形状モデルに対して,そのCADデータさえあれば接触点を求めることができることを確認した. 次に凝りの弾性特性を呈示するため,パラレルマニピュレータ部においてコンプライアンス制御系を構成し,その制御性能について検証した.乳房の柔らかさを実測した結果,約0.03N/mmであった.本装置で実現できる最小の柔らかさは0.01N/mmであり,十分乳房の柔らかさを呈示できることを確認した.ちなみに市販されている電動式の力覚呈示装置では実現できる最小の弾性特性が約1N/mm程度であり,本装置は,実にこれの1/100倍の柔らかさを呈示できることが示された. 動的な指の運動による接触点の変化に基づいて弾性特性を変化させることで,空間的に異なる弾性特性を設定し,それを認識する実験を行った.10mm/s程度の運動速度に対して十分弾性特性の変化を指先に感じることができ,凝りの有無の判別に利用できる可能性があることを確認した.
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