研究概要 |
近年,微細物操作を,人の手を介さずに繰り返し高速・高精度処理できるようなシステム開発が望まれている.本プロジェクトでは,細胞インジェクションに着目し,力学的観点から人間の優れた情報処理能力を解析することを通じ,微細物操作において必要な技能を解明することで,微細物操作の自動化を目指す.このため,本年度では,まず,技能解析のためのデータ収集用システム開発を行った.山口大学総合科学実験センター生命科学実験施設に設置されているインジェクションシステムを土台に,1.移動・変形量計測システム,2.力計測システム,3.圧力計測システムの開発を行った. 1.移動・変形量計測システム:細胞の動きや変形,ホールディングピペットやインジェクションピペットの動きを計測するため,顕微鏡を通して得られる画像をCCDカメラ,キャプチャBOXを通してPC上に記録し,それらを解析する装置を構築した. 2.力計測システム:圧電フィルム(PVDF)を用いて,インジェクション(ホールディング)ピペットに着脱可能な力計測装置を開発した.細胞を変形させる実験を行い,力センサが十分な感度を持つことを確認した. 3.圧力計測システム:ホールディングピペットは細胞を保持するために用いられる.操作者はシリンダ内の圧力を操作することで,細胞を空気圧により吸引することにより保持を行う.この吸引力を計測するための圧力計測システムを開発した. また,微細物操作で問題となる物体と物体との間にはたらく凝着力を緩和する手法としてエンドエフェクタを振動させ,把持対象物との間にスクイズ効果を生じさせる方法を見出し,この方法に基づく新たな微細物操作方法を提案し,実験によりその有効性を確認した.
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