研究概要 |
今年度は主にマイクロレンズアレイを用いたフェムト秒レーザー広領域一括微細加工技術に関する研究を行った。光学系として,最初にレーザー光をマイクロレンズアレイに通して多焦点を形成した後,リレーレンズを経て光学顕微鏡に導入し,対物レンズによって集光して多焦点加工を行うものを構築した。これにより,試料の様子を観察しながら多焦点加工を行うことが可能になった。 この光学系を用い,実際に加工を試みた。ガラス基板表面にフェムト秒レーザーパルスを多焦点集光照射したところ,アブレーションにより表面に周期的パターンができた。ピッチが150μmで正方格子状にレンズが並んだマイクロレンズアレイ,焦点距離150mmのリレーレンズ,倍率40倍の対物レンズを用いて加工したとき,ガラス表面の周期構造のピッチは4.6μmだった。また,リレーレンズを焦点距離250mmのものに変えると,ピッチは2.6μmとなった。幾何光学的な考察から,この周期は,マイクロレンズアレイのピッチ,リレーレンズの焦点距離,対物レンズの倍率によって決まることを導出した。導出した式を使って計算した周期は,実験結果とよく一致した。 表面に周期構造を作製したガラス基板にレーザー光を照射すると,透過した光に回折パターンが現われた。633nmのHe-Neレーザー光を照射したとき,一次光の回折角は8.1度だった。これは周期から計算した回折角とよく一致した。このように,回折光学素子として機能するような周期構造物を,スキャン等をすることなく簡単に作製できたことから,本手法の有効性が示された。
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