研究概要 |
自身の身体があたかも相手の空間にまで拡張しているかのような感覚や,離れた相手が自身の現場に居合わせているかのような感覚を産み出すために,双方の身体行為を実体の道具の動きを介して表現し,さらにはその道具を操作している状況を映像空間で共有する手法をこれまでに提案した.本研究では,まずはこの手法の有効性について検討し,設計手法の構築を目指して,先に開発したコミュニケーション・システムを活用し,2,3の実験を行った.そしてこの結果に基づき,コミュニケーション・トイ(コミュニケーションを支援する玩具)という視点から,家庭などでの利用へ向けて,離れた双方の場所においてあるトイ・オブジェクトを動かし合いながらコミュニケーションするというアイデアを考案し,以下に示す3つの点から要素技術やそのシステム開発に取り組んだ.1つめは,映像上の相手のトイ・オブジェクトを遠隔から操作することを実現するため,画像処理により,自身のテーブル上のマーカーを移動させると,それにしたがって相手の実体のディスクが回転する制御システムを開発した.2つめは,互いが操作するトイ・オブジェクトの動きを制御するために,情報コンセントに装置を接続するだけで自動的に遠隔の相手の装置を認識し,かつ自身の現場のトイ・オブジェクトの動きを制御する小型の通信制御システムを開発した.そして,3つめには,小型のトイ・オブジェクトのみならず,身体サイズのオブジェクトとしてアクチュエータ・ユニットを組み込んだ椅子システムを開発し,小型のトイディスクを操作すると相手の椅子が回転したり,あるいは自身の椅子を操作することで相手の椅子を操作可能なシステムを開発した.以上により,自身の手で実際に操作可能であるトイ・オブジェクトを利用して,離れた相手とあたかも同じ場所にいるかのような感覚を創出し,対話コミュニケーションを支援するための技術を開発した.
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