研究概要 |
本研究の目的は,効果的な歩行トルクとしての股関節トルクを主に用いた受動的歩行に基づくダイナミクスベースト歩行手法を開発し,シミュレーションおよび実験によりその有効性を検証することにある.制御対象は胴体の両側に2脚を配置し,円弧状の足を持つ2次元モデルとしている.支持足の円弧中心周りにおけるロボット全体の重心の振動と胴体関節を中心とする遊脚の固有振動数に注目し,遊脚の調和振動を強制的に発生させるように接地点を制御し,系の不安定平衡点周りの運動がその動特性を維持しつつ対称となるように角速度を制御することで受動的歩行へ移項するダイナミクスベースト2足歩行を実現する. 今年度,本研究では,1)ダイレクトドライブモータを股関節に用いた実験装置の設計,製作,2)装置の動的モデルを得るためのパラメータ同定,3)直動関節である膝関節の伸縮による歩行の実現,さらに,4)PD制御を用いた歩行制御手法およびポアンカレ写像の固有値による制御パラメータの設計手法の提案をおこなった. 足首が自由関節である劣駆動2足歩行ロボットに対して,股関節トルクを意識的に主要トルクとして用いた2足歩行を実現する研究はない.従来の2足歩行ロボットの多くがZMP拘束下で歩行軌道へ追従させるために足首トルクを重視する中で,足首トルクは補助的なものであり,究極的には2足歩行が足首トルクを必要としないことを示す意味がある.また,ロボットのモデルに依存した制御系ではなく,固有振動数に注目したPD制御による角速度制御を用いた受動的歩行に基づくダイナミクスベースト制御を実現することで,より自然で効率的な2足歩行が得られる.さらに,歩行の安定性について歩行軌道の安定解析をするものは少ない,本研究では,離散力学系としてポアンカレ写像を導入し軌道安定性をポアンカレ断面上の不動点の安定性として解析するという特徴を持つ.
|