本年度の成果を要約すると以下のようになる。 1.解析ツールの向上 同軸多層超電導ケーブルは、その形状の対称性よりケーブル断面における周方向に等しい電磁界分布を有する。よって、中心軸から距離が等しい全ての周方向のベクトルポテンシャルおよび長手方向のベクトルポテンシャルを未知等ポテンシャルとして取り扱い、また、径方向には電流が流れないため、径方向のベクトルポテンシャルをゼロとすることにより、未知変数を大幅に削減し、非線形収束性の大幅な向上を行った。また、解析手法は、磁気ベクトルポテンシャルのみを未知変数とするA法とし、ケーブル断面の通電層に等電気スカラーポテンシャルを入力項とする電圧入力法を用いた。これらの解析ツールの改良により、大幅な計算コストの削減を行った。 2.シールド層の撚りピッチが通電層の電流分布に与える影響 通電層2層(S撚)・シールド層1層(Z撚)、および通電層3層(S撚)・シールド層1層(Z撚)の電磁界解析を行った結果、通電層の電流分布はシールド層の撚りピッチに大きく依存し、さらに通電層とシールド層を逆方向に撚ることにより、通電損の撚りピッチを極端に短くすることなく通電電流を均流化できることを示した。 3.低損失な同軸多層高温超電導ケーブル構造の検討 通電層3層(S撚)・シールド層2層(Z撚)から成る同軸多層高温超電導ケーブルの解析を行った結果、通電層においては、各層に流れる電流が各層の臨界電流値を超えない範囲で外側の層に偏流し、シールド層においては同じく、臨界電流値を超えない範囲で内側の層に偏流する場合にケーブルの損失が小さくなることを示した。また、各層に流れる電流が各層の臨界電流値を超えると損失が大きくなるため、通電電流の大きさにより交流損失が最小となるケーブル構造(撚りピッチの組み合わせ)が変化することを示した。
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